ほぼ毎日Snow Man

SnowManとその界隈の出来事を書いてます。

テレビの時代の終わりとジャニーズ

テレビの時代が終われば、むしろジャニーさんの理想が実現するのではないかと思った話。SnowManはほぼ出てきません。

 

ジャニーズを戦後日本のカルチャーの中で論じた「ジャニーズと日本」(※1)。事務所の創始者であるジャニー喜多川氏とアメリカを軸に、ジャニーズの創設からSMAP解散ごろまでを概観できる良著です。

 

久しぶりに再読して気がついたのですが、1970年代後半、ジャニーズはテレビの時代に乗り遅れており冬の時代を迎えていたのでした。同時代のアイドルと言えば、ピンク・レディー沢田研二さん。今でこそ「みんなで”お茶の間”に集まってテレビを見る」という文化は廃れてしまいましたが、当時はまだ家族みんなでテレビを見ていたのです。

 

今では、そんなことをしている家族はアニメ「サザエさん」かアニメ「ちびまる子ちゃん」の中ぐらいではないでしょうか。当時のアイドルは「非日常でありながらもお茶の間から浮きすぎない」ことが重要だったと思います。

 

例えていうなら、宝塚歌劇団のスターは非日常すぎて”お茶の間”になじまない的な感じでしょうか。宝塚は劇場で見てこそ本領が発揮されるわけです。一歩劇場に足を踏み入れれば、そこはもう別世界。ただひたすら舞台に身をゆだね、夢見心地のまま帰路につく。こんな幸せがあるでしょうか。我に返るのは、帰りにグッズを買いすぎて財布を出すときですかね。でも幸せだからいいんです。これが”お茶の間”ですと、なかなかそうはいきません。

 

テレビ時代のアイドルは、非日常でありながらも、非日常でありすぎないという微妙なバランスが求められたと思います。ジャニーズは今でこそテレビを席巻していますが、1970年代後半は、時代の波に乗り遅れて苦戦していました。理由は、ジャニーさんのエンターテインメントの理想がアメリカのエンターテインメント、特にブロードウェイミュージカルにあったからです。

 

ジャニーさんの原点は、若かりし頃のアメリカのシアターでの目撃体験だったそうです。「一時間の華やかなステージの後に楽屋に引き上げた出演者は、ほとんど即死状態のようで疲労感が目立った。メーキャップを落とすとほとんどが40代、50代だった。これが本物のエンターティナーだ」。それ以降、ご本人としては「ジャニーズは、ティーンエージャーで終わる存在にしてはいけないと決心した」そうです(※2)。

 

ジャニーさんは「劇場における非日常の存在」こそが真のエンターティナーだと思われていたのですから、テレビの時代に乗り遅れてしまったのもある意味必然。とは言え、そこは戦後の日本芸能界を生き抜いてきたジャニーズ事務所です。その後、テレビの時代に合ったスターを次々と誕生させ日本でも屈指の芸能事務所になりました。

 

その後のジャニーズの歴史を見ると、ご自身の理想とするエンターティナーを育成してきたとは言い難いところもあるのですが、少なくても、もともとの理想はそうだったということです。今となってはですが、日本社会において未成熟の若者たちがスターとして大衆に熱狂的に受け入れられるというのは、もしかしてジャニーさんにとっては本意ではなかったかもしれません。

 

さて、ピンク・レディーがデビューしてから50年。もはやテレビの時代は終焉しつつあります。エンターティンメントの主軸はすでにネットへと移動しました。テレビで人気が出るということは、なるべくたくさんの不特定多数の人の支持を得るということです。大衆の気分は移ろいやすく、常に新しいスターを求めています。ジャニーズ事務所も、どんどん新しいスターを生み出す必要があったし、どんどん新しいことをしなくてはいけないし、スターは孤高の存在ではなく大衆に寄り添う存在ではなくてはいけなかったのです。

 

ネットは違います。ジャニーさんが目指したパフォーマンスは「年齢と経験を重ねた実力のあるエンターティナーが演じる質の高いパフォーマンスを見たい」と思っている人だけに届けば良いのです。そして、エンターテインメントは何と言っても舞台です。生身の人間が演じる舞台にかなうものはありません。ネットで良さを知れば、必ずや「生で見たい」となるのは必然です。

 

40代になっても歌と踊りで質の高いパフォーマンスを見せる舞台ができそうなグループと言えば、筆頭は何と言ってもSnowManでしょう。メンバーのほとんどがすでにアラサーです。これまでの鍛え方を考えれば、10年後も余裕でゴリゴリのパフォーマンスができそうではないですか。メンバー最年長の深澤辰哉さんも、リーダーの岩本照さんも何年たってもアクロバットをやりたいとおっしゃっていますし。下積みが長かっただけに、むしろデビュー後はみなさん若返っているのではないかと思うくらいです。佐久間大介さんなんて7月で29歳になられましたけど、4,5年前の方がむしろ大人っぽい感じです。最近はキャラクター感が増して、もはや年齢不詳です(←褒めてる)。

 

歌と踊りのパフォーマンスではなく、お芝居のほうの舞台もこれからはさらにジャニーズの時代になるでしょう。SMAPさんや嵐さんが国民的スターとして活躍していた平成の間に、ジャニーズのタレントたちは数々の舞台を経験し、着々と舞台の世界で実績を積んできました。今やジャニーズのタレントは舞台の世界でもなくてはならない存在になりつつあります。

 

すでに多くの40代、50代のジャニーズがエンターテインメントの世界で活躍しています。田原俊彦さんが7月6日に60歳記念シングルを発売されましたが、還暦でもアイドルってすごいことですよね。これからはもっと多くの40代以上の方たちが活躍されると思います。

 

そう考えると、テレビにたくさん出ることが人気の証ではなくなる、つまり、テレビの時代が終わってからこそが、まさにジャニーさんの目指していたエンターテインメントの世界に近づくのではないかなと思いました。

(了)

 

※1 矢野利裕「ジャニーズと日本」講談社現代新書、2016年

※2 小菅宏「異能の男 ジャニー喜多川」2019年、徳間書店