ほぼ毎日Snow Man

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日本アニメ界を憂う

日本のアニメーターは中国で働いた方がいいんじゃないかと思った話。

 

SnowMan佐久間大介さんが声優としてダブル主演を務めた中国発フル3DCGアニメ「白蛇:縁起」。佐久間さんの声優ぶりは板についていて、初の声優の仕事でこれだけできるのは本当にすごいと思いましたし、映画としても本当によくできた面白い映画だなと思いました。

 

中国アニメを見るのは初めてでしたが、何より驚いたのは画面のクオリティの高さでした。動きのなめらかさ、迫力とスピード感のある戦闘シーン、実写とみまがうばかりの美しい自然、布や金属や自然物の質感。何より、画面の隅々まで行き届いた精密なアニメーション。全てを見ることはできませんでしたが、どの場面を切り取っても、どれだけ近くで見ても手を抜いた箇所は見当たらないと思います。

 

1回見ただけでも途方もない手間と時間がかかっていることがわかります。1本のアニメ映画にこれだけ予算をかけることができるのは、国で言えばもはやアメリカと中国だけでしょう。アメリカでもディズニー&ピクサーは製作費の半分をストーリーに費やすそうなので、さらにお金をかけてアニメーションそのもののクオリティを上げる方向にはいかないと思います。そうなるとアニメーションそのものに圧倒的な予算をかけられるのは、もはや中国だけかもしれません。中国国内のアニメ業界の構造はわかりませんが、もともと国内市場が桁違いに大きいのでこれからの伸びしろはかなりありそうです。

 

日本のアニメーターはもうみんな中国で働くか、中国企業の傘下で働いたほうがいいんじゃないかと思います。日本のアニメ業界では利益がアニメーターに還元されないような構造になっているし、アニメーターの給与が低すぎて生活できないからです。この問題は2005年にはすでに指摘されていました(※1)。

 

残念ながらその後も状況にあまり改善が見られなかったようです(※2)。2019年の調査でも、正社員として働くアニメーターは14%、一部の制作会社を除いては半数以上が委託契約のフリーランスだったそうです。新人の年収は100万代とのこと。バイトや仕送りがなければ生活していくのも苦しいと思います。転職サイトでは「平均年収400万」となっているところが多いようですが、実態は若いころは年収100万。それから低賃金でずっとがんばって、40代、50代くらいでやっと年収400万代ということのようです。

 

こんなに給与が低くても志望者が途切れないのは、ひとえに「アニメが好きだから、給与が低くても働きたい」という人がたくさんいるからです。やりがいの搾取です。私たちがのんきにアニメを楽しめるのは低賃金・重労働の過酷な現場で働いている多くのアニメーターの犠牲があってのことと思うと無邪気に楽しむ気にもなれず、最近はすっかりアニメから遠ざかってしまいました。

 

私がアニメを見ても見なくても、アニメーターさんの給与には何の関係もありません。ファンがいくらそのアニメが好きでも、アニメーターさんを金銭的に応援できるような仕組みになっていないからです。アニメがヒットすればそれだけ給与があがるとか、グッズがたくさん売れれば手当が出るとか、そういう構造になってないのです。

 

製作した段階でアニメーターさんとしてのお仕事は終わりで、映画がヒットするとか、グッズが売れたらその利益はそれぞれの関係者のところへ還元されるだけです。アニメーターさんあってのアニメ作品なのに、くそみたいなつまらないアニメだろうが、「まじ神」と思うアニメだろうが、単価が同じなら給与も同じなんておかしくないでしょうか。アニメ業界は大丈夫なのだろかと薄っすら思っていましたが、ついに日本人が中国企業の下請けをする時代に突入したようです。

 

日本の制作会社も、かねてより日本人よりも単価の低い国でアニメ制作の下請けをさせていましたが、中国の制作会社からすると「日本人なら中国人の3分の1で済む」のだそうです(※2)。

 

海外に下請けさせる場合、最も難しいのはクオリティコントロールなのですが、日本人であれば安心です。毎日ちゃんと出社して、文句も言わずに期限内に確実に求められているものを作り上げることに関しては日本人が最強。中国だと月収50万払わないといけないところが、日本なら月収17万ですむのです。安くて質の良いものができるので、中国側としてはいいことばかり。日本側としても、月収17万でも日本の業界平均より高いので、日本で下請けする人たちにとっては嬉しい話です。そのうえ、日本のアニメ制作会社ではめったにない福利厚生も整備されているというのですから、中国の下請けの方が断然良いです。この流れは今後加速していくと思います。

 

なぜこれまで日本のアニメ業界が変わらなかったのかと言えば、「アニメが好き」というだけで給与が低くても働いてくれる人がたくさんいたからです。何が問題かは業界の人であれば私以上に認識されているはずです。誰かを犠牲にしないと成り立たない業界は将来性がありません。今回、「白蛇:縁起」を見たことで、久しぶりに「『ジャパニメーション』はなぜ敗れるか」を読み返しましたが、あまりにも状況が変わってなくて呆然としてしまいました。16年たって何も変わらないのであれば、近い将来において日本のアニメ業界が変わるとは思いません。

 

日本で低賃金・重労働で苦労されているアニメーターの方は、日本で中国企業の下請けをするか、中国語を学んで中国でアニメーターとして採用してもらうという選択肢は検討に値すると思います。

 

「白蛇:縁起」を見たことで色々と考えた週末でした。

 

’(了)

 

※1 大塚英志「『ジャパニメーション』はなぜ敗れるか」角川書店、2005年

※2 「日本人なら中国人の3分の1で済む」アニメ制作で進む"日中逆転"の深刻さ 日本が中国の下請けになっている | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)

(最終閲覧日:2021年8月3日)